泥棒役者
あれは僕がまだ
『大きくなったら何になりたい?』という質問に
『ムツゴロウさん』と答えていた頃の事です。
その日は、同級生からファミカセを借り
上機嫌で下校しておりました。
【スペランカー】というゲームです。
プレイしてみると色々ガッカリするゲームなのですが
その時はまだ未経験な僕でしたので
満面の笑みを浮かべ家に急ぎました。
家まであと20mという所だったでしょうか
突然、自転車に乗った高校生が近づいてきて
声をかけられたのです。
『じゃ、カネ出せよ!』
ポカーンとしました。
『じゃ』の意味がわからない。唐突すぎです。
『早く、カネ出せ!』
うん、カツアゲでした。
しかし、小学生の僕は財布など持っていなかったので
結果的に【スペランカー】を取り上げられました。
友達の物だからという主張もあっさりスルー。
高校生は立ち漕ぎで去って行きます。
僕は急いで家まで走り母に報告しました。
『スペランカーが・・・スペランカーが・・・』
母、ポカーン。
何とかカツアゲの被害者である事を伝えると
現場へ連れて行くよう言いました。
『こっちなんだけど・・・』
と、その場所に着いた時
なんと高校生が自転車で戻って来たのです。
『あ、アイツさ!』
大声で耳打ちすると母は高校生の元へダッシュ!
ガバっと腕を掴みました。
狼狽する高校生に母はゲームを返すよう要求。
結局、彼はふてくされながらも
【スペランカー】を母に渡し
立ち漕ぎで去って行きました。
ゲームを手にし僕の方へ振り向いた時の母の笑顔。
スッピンなのに輝いていました。
こんな流れでようやく遊ぶ事が出来たスペランカーは
やっぱり色々ガッカリだったけど
普段は優しい母の強さを感じる事ができ
【何となくカツアゲにあって良かった】と思えた1日でした。
この【泥棒役者】は
ある家に泥棒が忍び込んだ事によって
全ての人がhappyになるお話。
最後まで名前も素性も明らかにならない泥棒ですが
こんな泥棒にだったら忍び込まれてもいいかなと
チョットでも思ってもらえれば嬉しいです。





















